バタバタしてて更新が遅れましたが、前回の続き。
「そむりえ亭」の鮮やかなマリアージュを、ワインの感想を交えながらご紹介しましょう。

ステファン・ドゥルノンクール氏のこだわりは「粘土石灰質土壌から生まれる力強いワインを繊細に仕上げる」ことだそう。ビオディナミ農法も取り入れています。

《ワインリスト》
○ジャカール・ブリュット・モザイク(シャンパーニュ)
●シャトー・ジゴー キュヴェ・ヴィヴァ 2010(ブライ / Me100%)
●ドメーヌ・ド・ラ 2012(カスティヨン / Me80%,CF20%)
●シャトー・パヴィ・マッカン 2012(サンテミリオン/ Me85%,CF14%,CS1%)
●ドメーヌ・ド・ラ 2005 マグナム(コート・ド・カスティヨン / Me60%,CF25%,CS15%)

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さすがグレートヴィンテージ2010年のシャトー・ジゴー。メルローという品種がこれほど外向的だったのかと驚かされます。

端正に整った甘味とタンニン、滑らかな質感、ひんやりとした冷涼感を伴いスムースに流れていくのに、ハッとするほど長い余韻とフィネスを残していく。美味しい。

これには、衣をつけて揚げた冷製のスズキを、卵黄とビネガーのソースで。

この店のマリアージュで一番勉強になるのは、絶妙なビネガー使いと赤ワインの組み合わせ。このマイルドな酸味のソースが、若いタンニンと寄り添いながら、ワインの甘味を引き出します。とても繊細な技。

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2010年に対して2012年は平均的な年。夏は日照量に恵まれたけど、降水量の多かった春が収穫量に影響し、シャトーによって出来はまちまちだったのではないでしょうか。

2010年を飲んだ後の ドメーヌ・ド・ラ 2012 は、輪郭がぼやけモヤモヤとした締まりのなさは否めませんが、色は濃く深みがあり、肉感的で優しさと包容力のある味わい。構えなくとも比較的早くから楽しめます。

これにもやはり、エストラゴンの香りとマイルドな酸味のベアルネーズソースを。塩で旨味引き出した牛リブロースに、厚みのあるワインが相乗。

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さて、個人的に楽しみににしていたパヴィマカン。過去に参加したボルドーの試飲会でも、その圧倒的なボディと桁違いのミネラルで、他を圧倒していました。

この筋肉質なスタイルは、高度が高く粘土質の多いテロワールの証。全ボルドーの格付けワインの中でも、実力と価格が伴わないお値打ちなシャトーのひとつではないでしょうか。かなり長熟型ですが。

さてパヴィマカン2012も、やはりもったりと濃く、ド・ラ2012と傾向は似ていますが、重心が低く、よく流れるのは流石です。この大柄にして、ここまで味の全体像が見えるのも、二日前からデキャンタしてくださったからこそ。私もボルドーを扱う時が一番神経使います。特に右岸。

そして、このワインに合わせた皿が、今日一番の感動をくれました。玉ねぎの炭をまとった鰆 飴色玉ねぎ添え。玉ねぎの炭の優しい甘味が、ワインの繊細なタンニンを包み込みます。

正直、自分のワイン人生の中で、これほど精緻な芸当に出会ったことがありません。何が凄いって、「料理の邪魔をしない」と言われるような強くない年のワインでさえも主役にしてしまう、一歩下がった料理と、その安定感。ワインバーの料理とはどうあるべきかを考えさせられました。

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最後のドラ2005のマグナム、こんなパワフルなヴィンテージでさえも、食事向きのスタイルに仕上げるドゥルノンクールのワインも感心せずにはいられない。肉付きが良いけれど、終始芯の通ったミネラルを感じます。先程の2012年が下草の香りなら、2005はトリュフ。

これには雲丹を添えた毛蟹のリゾットを。自分も背子蟹にピノを合わせたりしますが、右岸ボルドーも実によく合う。雲丹単体でボルドーに合わせると「バニラの甘さが引き立つ」のだそう。この料理の旨味には、パヴィマカンもバッチリ。

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ドゥルノンクール夫妻、とても仲が良さそうで、チャーミングな奥さんは仕事の上で、かなり発言力を持っておられるようで、その尻にしかれた感じもまた微笑ましたかった。

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いやぁ、名醸造家と"なにわの名工"のコラボ恐るべし。この域に到達するまで、自分の修行はまだまだ続きそうです。


そむりえ亭
大阪市中央区西心斎橋2-10-14
06-6484-0530
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